お子さんの姿勢が悪くなってしまうと、周りからだらしなく見られてしまうのはもちろん、スポーツではパフォーマンスが落ち、さらには怪我にも繋がります。
そのため、猫背や内股のようなお子さんの悪い姿勢を改善したいと思って、姿勢を改善するための体操を行う親御さんはとても多いのですが、なかなか結果に繋がらないでやめてしまったというご家庭がほとんどです。
姿勢の改善に大切なのは運動の習慣と、それと同じくらいに「日頃からの意識」をお子さんに持たせることが鍵となります。
運動はもちろん大切なのですが、良い姿勢の子は「姿勢を改善するために必要なトレーニング」を毎日自宅でしているとは限りません。ではなぜトレーニングしなくても姿勢が良いのかというと、「良い姿勢に直そう」という自分の体への意識が、常に出来ているためです。
ここでは、子供の姿勢が悪くなってしまう原因とともに、姿勢を改善するために必要な「自分の体への意識」を子供に持たせる方法と、悪い姿勢を改善する正しいストレッチとトレーニング方法を、現役の子供アスリート専門スポーツトレーナーの私が動画も交えて解説していきます。
目次
子供の姿勢が悪くなる3つの原因と及ぼす影響
子供の姿勢が悪くなる原因とその影響は以下の3つです。
- 生活様式が和式から洋式への変化で起きた座り姿勢の変化
-
小型ゲーム機の発展によって起きた子供たちの運動量の減少
- 履物の発展による子供たちの足指が浮いている「浮き指」という恐い現状
そして、姿勢が悪くなるとスポーツ時のフォームも歪むため、パフォーマンスが落ちる上に体を痛めることにも繋がり、スポーツで達成したい夢や目標が叶えられなくなるのです。
実際に、私が指導させて頂いた中でも、姿勢の悪さからくる腰痛や成長痛で悩み、練習や大会に復帰できず苦しむお子さんを前職の時に沢山見てきました。
そうして悩んでいる子でも、痛みを改善するために必要な姿勢のトレーニングと姿勢を変える意識を持たせてあげると、練習や大会にも復帰でき、その子が取り組んでいたスポーツで結果を残せるようになりました。
姿勢の良し悪しは体の動きに直結するので、姿勢が悪くなる3つの原因と影響について、1つずつ掘り下げて学んでいきましょう。
問題1 生活様式が和式から洋式への変化で起きた座り姿勢の変化
和式から洋式への生活様式の変化は、日本人がこれまで生活の中で行ってきた「きつい動作」を楽にさせてくれましたが、それは同時に体力の低下も引き起こし、結果として姿勢を悪くする要因となってしまいました。
その例を以下に3つほど挙げてみます。
- 深くしゃがんでいた状態から腰掛けて座るだけになったトイレ
- ちゃぶ台を囲んで床に座る状態から椅子に腰掛けて食事をするようになった食卓
- 床で寝ていた敷布団から床から高さのあるベッドで寝るようになった寝具
このように日本人の生活は変化しました。
この変化によって体への運動量はどのように変化したかというと、例えば人が立っている状態から「10センチしゃがむ」・「50センチしゃがむ」のを1分間キープする運動をするとしたら、どちらがきついでしょうか?
ではやってみましょう!どうでしたか?
「50センチしゃがむ」のをキープする方が「きつい」と思います。
和式トイレで代表とされていた深くしゃがむという動作が日常で少ないので、体が硬すぎて和式トイレでは用を足せないお子さんもいるのが現実です。
その他にも学校生活での掃除方法も、床は雑巾掛けが昔までの常識でしたが、今はモップで床を磨く学校も少なくありません。
その影響で、昔に比べて子供の腕の筋肉や骨への刺激が低下しており、転んだ時に腕で体を支えきれずに顔面を強打したり、腕を骨折したりすることも多くなったのです。
このような生活様式の変化によって日常生活の中で行われていた運動量が減少し、子供の体力が低下することで姿勢が悪くなるのです。
問題2 小型ゲーム機の発展によって起きた子供たちの運動量の減少
運動量が減った要因は生活様式の変化だけではありません。
小型ゲーム機の発展も、子供たちが外で体を動かして遊ばずに家の中で遊ぶように「遊び方」を変化させ、運動量を減らすことに繋がりました。
今では家にいながらお友達とネット上で繋がってゲームをできるようになったので、外に出る機会が極端に少なくなっているのです。
これは家の中だけの話でなく、公園でも鬼ごっこをせずに携帯ゲーム機を持ち寄って友達同士でゲームをするという光景も今では珍しくありません。国の調査でも、小学5年生で1日にゲームやパソコンのスクリーンを見る時間が5時間を超える子も少なくないという統計結果も出ております。
ゲーム機の発展は子供たちの遊び方を変え、子供の1日の運動量の減少を生んだのです。
問題3 履物の発展による子供たちの足指が浮いている「浮き指」という恐い現状
ここ十数年で大きく発展したものはゲーム機だけではありません。
お子さんの靴も、キャラクターイラストで飾っただけのデザイン性を重視した履物から、近年では軽い・足に負担がかかりにくいなどの機能性の高い履物へと変化してきました。
この履物の発展に伴い、足に負担がかからなくなった結果、力を入れなくても姿勢を保てるようになり、その結果、日常的に使う筋力が衰え、「浮き指」の子供が増えている状況になっています。
人が立っている時に本来なら足の指は「床についている状態」になっていますが、浮き指のお子さんは足の指が「床についていない状態」なのです。
浮き指になると、自分の体重が踵側に移動し、腰を反りすぎる姿勢になるので腰の痛みや骨折の原因になってしまいます。
そんな浮き指にならないようにするために、靴やスリッパを履かずに過ごせる場所では、なるべく素足で過ごすことをオススメします。
素足で動くことによって、足の指や筋肉に刺激が入り、足の筋肉全体が鍛えられ、浮き指の予防になるのです。
ここで、お子さんの浮き指チェックをしてみましょう。
- 子供は気をつけの姿勢で立ちます。
- 次に、子供の5本の足の指の下に、親がプリント用紙を入れます。
- 子供の5本の足の指と床の間に紙が入ってしまうと浮き指の可能性があります。
いかがでしたか?
お子さんに浮き指の可能性がありましたら、以下で紹介する運動を親子で是非行ってみてください。
子供たちの足指を守るためには、「大人たち」が「子供の浮き指」という体の状況を知ることがまず重要です。
これから実際に、姿勢改善に必要な体操を説明していきます。
自宅でできる子供の姿勢を改善するストレッチとトレーニング方法
昨今、動画配信サイトや各SNSでたくさんの有名人・有名スポーツ選手が普段行なっているトレーニング動画を見ることが可能になりました。
しかし同時に、その動画をお子さんが見様見真似で行い、「運動中に怪我をしてしまった」「運動の効果が出なくてやめてしまった」という声も、お客様から聞くようになりました。
では、見様見真似をしたことでなぜ怪我が起きるのでしょうか?
怪我をしたり、運動の結果が出なかったり、運動の効果が出ない方に共通するのは、実際に行っているフォームと頭の中でイメージしているフォームとが一致していない場合が多いのです。
自分の体がどうやって動いているのかを客観的に把握せずに行うと、正解のフォームとかけ離れた運動になってしまいます。
動かすべきポイントを理解している動きでないと、普段使っている筋肉ばかりを無意識に頼ってしまい、さらにその筋肉に疲労が溜まることで、体のコリの蓄積や体の痛みの出現に繋がるのです。
だからこそポイントを押さえて、運動をする時に自分の姿勢を確認しながら行うことは姿勢をよくするためには必須です。
運動の方法と合わせて、運動をより効果的に行うためのコツをこれからご紹介します。
子供の姿勢をチェックする方法
姿勢のチェックをする際におすすめなのは、お子さんの姿勢をスマートフォンやタブレットのカメラアプリで撮影する方法です。
私は、実際に「グリッド線撮影アプリ Professional」というアプリを使用しております。
グリッド線撮影アプリProfessional
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このアプリを開くと自動的に撮影画面に縦と横にグリッド線が出現し、撮影することで撮ったお子さんの姿勢が「まっすぐなのか」「曲がっているのか」がわかりやすい写真になるのです。
では、実際にそのアプリを使用して、お子さんの姿勢写真を撮ってみましょう!
まず初めに、アプリを起動させ、以下の写真の様にお子さんの頭頂部から足裏までが画面に入るように親御さんが写真を撮ります。
3人の写真を見ると、それぞれの姿勢にも色々な違いがあると思います。
- 腰の反り方
- 背中の曲がり方
- お腹の出っ張り方
という部位がそれぞれ違うと思います。
実際にアプリを利用して解説する動画を作成したので、ご覧ください。
姿勢の良し悪しは動作に繋がっているので、姿勢が改善することで筋肉が正しく動くようになり、スポーツの動きも良くなるのです。
来店されたお子さんをタブレットで撮影し、その子に写真を見せながら説明したところ、自分の姿勢の問題を自覚し、気をつけるポイント(課題)を知れたことによって、改善方法もすんなりと理解できて走るのが速くなった子もいます。
お子さんの姿勢を改善するためには、「自分の今の姿勢を見る」ことが大変重要です。
そして、お子さんだけではわからないことも多いので、親御さんが空いている時間で是非このように姿勢の写真を撮影して見せたり、一緒に運動をしたりとご協力をして頂きたいです。
それだけで、お子さんのスポーツをする未来を変えるお手伝いができるのです。
姿勢をチェックした後に行うおすすめのストレッチ
姿勢のチェックが終わったら、確実に姿勢が改善できるように自分のフォームを意識したストレッチをしていきましょう。
お子さん自身で「自分がどう動いているか」を理解すると、効かせたい筋肉を狙ってストレッチできます。
例えば、自分の姿勢が客観的に見られていないとストレッチやトレーニングをしている時に自分が思っているフォームとの間に「ズレ」が起きてしまい、ストレッチ前後の効果に差が生まれます。
トレーニングで太ももの筋肉を使っていたのに、ふくらはぎのストレッチばかりをしても効果が無い、ということですね。そして、ストレッチをする際には、無理に筋肉を伸ばそうとするのではなく、自分の中の「ズレ」を明らかにしてそれを改善するための方法を心がけましょう。
「ズレ」を理解するためには、自分の運動フォームを携帯で撮影することをおすすめしているので、これから紹介している運動を行うお子さんに行ってもらい、その様子を親御さんが撮影しましょう。
脇腹のストレッチ
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もも裏のストレッチ
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キャットストレッチ
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子供がストレッチ後に行いたい姿勢改善のためのトレーニング
先程行ったストレッチだけでは、お子さんの姿勢を良い状態に保つには難しいです。
「ストレッチ」は筋肉を柔らかくする効果がありますが、「トレーニング」は筋肉を使えるようにするので、姿勢の維持にはこの2つの方法が不可欠です。
筋肉の機能には、柔らかさ(柔軟性)と強さ(筋出力)があり、片方だけが強すぎても体がうまく使えず、姿勢の乱れに繋がるのです。
「ストレッチ」と「筋力トレーニング」は、セットで行うことによって相乗効果が期待できるのです。
ここでは、須賀が実際に子供のアスリートたちに行っているトレーニング方法をご紹介します。
子供が姿勢を変えるトレーニングを行う時に気をつけたい2つのポイント
これまでに、姿勢の見方・ストレッチ・トレーニングの方法をお伝えしました。
でも実際のところ、これらをただ行うだけでは結果が出ないのが事実です。
お子さんが良い姿勢を維持するためには、親御さんがお子さんに対して行う協力の形が大変重要になります。
子供の動きや姿勢を子供自身がわかるようにする工夫が必要
ここまででも書いてきましたが、「自分が頭に浮かべた動きのイメージ」と「他人から見た自分の動き」には驚くほどの違いがあります。
腰を使って動かしているつもりが腕の筋肉で引っ張り上げてしまっているなど、自分の頭の中でイメージしている動作と、実際に行っている動作が異なることで、知らず知らずのうちにフォームが崩れてしまうのです。
ここで少し体を使ってみましょう。
お子さんが立っている状態で、手を自分の肩の高さぐらいになるよう、真横に開かせてみてください。
それを親御さんが観察しましょう。手の高さはどうでしょうか?
本人は真横に開いているつもりでも、周りから見ると、手が肩よりも上になったり下になったりと、イメージと実際の姿勢は意外とズレが大きいものです。
先ほど使用したカメラ機能のある機材を用いて、ご紹介した運動の動画・静止画を撮って、お子さん自身の運動フォームをお子さん自身が見られるようにしていきましょう。
自分の動きを客観的に見られるようにすることが姿勢改善への近道です。
親御さんの言葉のかけ方が子供の姿勢を変える
親御さんが「この運動が絶対体に良いから絶対やりなさい!」と命令をしても、お子さん自らその運動を続けられず辞めてしまうお子さんが多いです。
子供自身に運動の目的・必要性が伝わっていないので、「やりたくもないこと」をやらされている状態になってしまい、それでは続けられないのも当然ですよね。
また、意識の重要性をお伝えしてきています通り、本人が集中して取り組まなければ、トレーニングもストレッチも効果半減…どころか、かえってケガの原因にもなってしまいます。
そのため、親御さんも一緒になって体を動かしお子さんとコミュニケーションをとること、「なんでこの運動をしているのか」という目的を伝えることが大変重要です。
実際に、私のトレーニングジムに来ているお子さんの中にも、親御さんの協力を経て、良い姿勢への変化を感じるようになったお子さんも多いです。
親御さんの声かけや実際に一緒に運動をする大人の態度でお子さんの力は更に引き出されていくのです。
子供の姿勢は遺伝で決まるのではなく、環境で変化する
親子同士が横に並んで立つと、親子が同じ姿勢をしていることが多いですが、これは遺伝ではなく過ごしている環境によって同じ姿勢になっているのです。
普段住んでいる家の中では、大人と子供が同じものを生活の中で使うことによって、親子で体の使う部分が一緒になるのです。
例えば、食事をする時の椅子の座り方は大人も子供も同じ姿勢をとるので、同じ部位の筋肉で体を支えることになるので使う筋肉も一緒になります。
お子さんの姿勢は親御さんの選択次第で「良い姿勢になるのか」「悪い姿勢になるのか」を決めてしまうのです。
だから、お子さんと親御さんで時間があるときは一緒に体を動かしていき、お子さんの姿勢改善のための運動をしましょう。
ここで紹介した方法を用いて、お子さんの姿勢改善のためになる行動をお子さんと試行錯誤しながら継続していきましょう!